河村康輔が語る OASIS への想い | Interviews

ノエルとリアムをシュレッダーアートにできた経緯はなんだったのか?

アート 
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東京・神保町にある気鋭のギャラリー『New Gallery』では、12月8日(日)まで、Oasisを撮り続けた写真家 ジル・ファーマノフスキー(Jill Furmanovsky)とコラージュアーティスト/グラフィックデザイナー 河村康輔による企画展 “Oasis Origin + Reconstruction”が開催されている。 

この企画展のすごいところは、音楽ファンなら誰しもが知るベストアルバム『Time Flies 1994-2009』のカバーフォトやギャラガー兄弟の顔写真、はたまたOasisロゴが、シュレッダーされ、切り貼りされ、写真とは別のアート作品に仕上げられていることだ。ジルのドキュメンタリー写真やポートレートを“切って貼って”再構築するという行為は、許されざる気もするが、それが許された理由はなんだったのだろうか? そして、河村康輔自身はOasisのファンだったのだろうか? いくつかの疑問をぶつけるべく『Hypebeast』は河村康輔に迫った。


Hypebeast:展覧会の話はどういったきっかけで始まったのですか?

河村康輔:最初は六本木で開催される展覧会『リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30 周年特別展』に関連して「Oasisロゴをアレンジしてほしい」という依頼から始まりました。ただ、いっぽうで、ロゴをいじるって確実にOKが出るかわからない、みたいな話もあって……。そういったなかミーティングを重ねる上で、もともとファンなこともあり展覧会のグッズとかもやりたいというリクエストしました。

で、プロジェクトを進めていく中で、ジル・ファーマノフスキーの写真の許諾を取ろう、と。そしたら、写真を触ってもいいという許可が出て。じゃあ、得意とするシュレッダーを使用した独自の手法で作品を制作しようと思い、写真を使ったアート作りも開始。夢中にやっていたら、徐々に数が増えていき、最終的には多くの作品ができあがったんです。なので、こっちはこっちで展覧会をやろうとなりました。

Oasisのふたりが見て「めっちゃいいじゃん」と思ったから広がったのかと勝手に想像していました。

あ、でも、ふたりからはいい反応をいただいていたみたいです。ロゴの段階から、修正のリクエストなどはなくOKをもらえていたので。

Oasisが衝撃の再結成を発表した直後での展覧会開催です。再結成の話は事前に聞いていたのでしょうか?

知らなかったんです。ソニー・ミュージックの担当者も知らなかったようです。というのも、その担当者とフジロック(2024)に行ってたんですよ。3日目のトリのノエルを観てました。そうしたら、後半のほとんどはOasisの曲を披露してくれていたから、むしろ「もう再結成はないな」と思っていたぐらいで(笑)。

じゃあ、Oasisの公式『インスタグラム』のアカウントから「“27.08.24”、“8am”」という告知がされたときは再結成とは思わなかったんでしょうか?

思わなかったです。むしろこの展覧会の告知をしてくれるのかな、ぐらいに思ってました(笑)。まわりは本当に誰も知らなかったんです。

河村さんがOasisにハマったきっかけは何ですか?

中学生時代は、UKのパンクロックしか基本的に聴いてなかったんですよ。ヒップホップも聴いていない。でも、たしか高校1年生の頃、学校帰りにOasisのCDを買った友人がその足で、駅前だった僕の家に遊びに来て。その友人が、どうしても早くOasisの新譜を聴きたいからと、僕のCDラジカセで聴いたんですよね。その流れで聴いているうちに、2曲目ぐらいから、ん? なんかいいな、と思って。そこが気になり始めたきっかけです。Oasisは、パンクロックとは違ったので、ノーマークだったんですが、なんとなく気になるからカセットテープにダビングさせてもらいました。で、なぜかOasisの曲が頭を回るようになって。少ないお小遣いでは、パンクロックのアルバムを買うようにはしてたんですが、そんな中、たまたまリーズナブルなOASISの輸入盤のCDを見つけて。『(What’s The Story) Morning Glory?』で1200円ぐらいだったかな。それを買って、Oasisの真のファンになりました。そのアルバムはほんとずっと聴いてましたね。

いちばん好きな曲って?

こないだも聞かれたんですが、正直どれがいいって選びづらくて。名曲揃いで選べない……と思ってたんです。同時にあまりにもメジャーな曲って、おおやけで良いって言うのは恥ずかしいとも心のなかで思っていたんですよ。とはいえ、この質問はよくされることもあり、じゃあ、どの曲なんだろう、と真剣に自問自答するようにしました。そこで、最終的に思ったのが、『Whatever』は純粋にかっこいいってこと。他の当時のミュージシャンの曲を聴くと“懐かしい”って感じになるんだけど、『Whatever』って、常に新鮮じゃないですか? 聴くたびに少し違う気もする。つまり、何色にもなる曲。

今回の企画展 “Oasis Origin + Reconstruction”のフライヤーにも使われているシュレッダーアートは、最初からイメージできているものなのでしょうか?

はい、ざっくりの全体像はなんとなく見えていながらスタートします。これだと、ポートレート2枚の写真を並べるとわかるんですよ。で、それが仕上がると、やっぱこうなったって達成感があります。作業としては、ポートレートをシュレッダーにかけた後、その細長く切り刻まれたものをキャンバスに1枚1枚、手作業で貼っていきます。このアートの特徴は、一番左の目はノエルだな、って思いますよね? そして、一番右はリアムだな、と。ただ、真ん中の目って、どちらの目かわからないですよね? ノエルからリアムへ顔が変わっていく感じがこのアートのポイントで、兄弟だから、うまく絶妙にグラデーションできたのかもしれません。

見事な調和です。ただ、あえて聞きます。今の時代だと、AIにやらせれば一瞬でできるかもしれないですが、AIにない手の作業の良さってなんなんでしょう?

正直、僕はデジタルでやる場合もありますよ。ファッションの場合はそっちが多いかな。でも、同じお題のものをアナログでやると実は全く別ものになるんですよ。いちばんの特徴としては立体感ですね。通常、3枚の写真をシュレッダーにかけるんです。でも、シュレッダーって、原案の紙や写真を置くときは手作業なこともあり、少しずれたりするんです。必ずしも平行じゃないし、同じ写真などでも、まったく同じに切られたりはしない。

このポートレート2枚のアートは、1枚づつ切り貼りしたものですけど、他のやつは、実は二重三重に貼っていたりするんですよ。1本に見えて、実は3本も貼っていることが多い。そこに独自の味わいが生まれ、深みになっています。デジタルでは出せない立体感や、シュレッダーを使用することによる偶然性が重要だと考えています。

Oasisの『Whatever』の曲のように、何度見ても幾重にも広がる新鮮さがあります。貴重なお時間、ありがとうございました!

河村康輔
アーティスト/グラフィックデザイナー。1979年広島県生まれ。コラージュアーティストとしてアーティストとのコラボレーションや国内外での個展、グループ展に多数参加。代表作に大友克洋氏の初の大規模原画展『大友克洋 GENGA展』(2012)メインビジュアル制作やAKIRAを使用したコラージュ作品「AKIRA ART WALL PROJECT」の発表(2019)、個展『TRY SOMETHING BETTER』(2021)など。現在もアパレルブランドへのグラフィックワーク、ジャケット、書籍の装丁、広告デザイン、アートディレクションで活躍している。2021年に〈UT(ユーティー)〉のクリエイティブディレクターに就任。

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