村上隆と Hublot のコラボの真相 | Interviews

「MP-15 タカシムラカミ トゥールビヨン サファイア レインボー」で最終章となるのか?

ウォッチ
3.6K

革新的な腕時計を常に生み出すスイスのウォッチメーカー〈Hublot(ウブロ)〉と現代美術家 村上隆による最新コラボレーション時計が登場。トゥールビヨンが真ん中に収まり、「お花」のデザインがレインボーになり、“かわいい”が加速した「MP-15 タカシムラカミ トゥールビヨン サファイア レインボー」である。

〈Hublot〉と村上隆の関係は、2020年に村上隆が初めて〈Hublot〉のマニュファクチュール工場を訪れたことから本格的にスタート。翌年となる2021年1月に初のコラボレーション時計となる「クラシック・フュージョン タカシムラカミ オールブラック」を発表。2作目は同年12月に発表した「クラシック・フュージョン タカシムラカミ サファイアレインボー」だ。3作目となる「クラシック・フュージョン タカシムラカミ ブラックセラミック レインボー」は、2023年2月のNYと同年の3月にスイスで行われたウォッチズ&ワンダースにおいて計13種類を発表している。4作目は2023年5月に「MP-15 タカシムラカミ トゥールビヨン オンリーウォッチ」で、ここからが完全オリジナルケースだ。5作目は、世界限定50本で2023年11月に登場した「MP-15 タカシムラカミ トゥールビヨン サファイア」(透明ケース)。そして、本6作目は、5作目をベースに444石ものカラーストーンを敷き詰めた世界限定20本のタイムピースだ。

しかし、世界中からの名だたるブランドからのラブコールも断る(はずの)村上隆と〈Hublot〉がこれほど継続してコラボレーションが続いた理由はなんだったのだろうか。『Hypebeast』は村上隆にインタビューする機会を得た。

村上隆と Hublot のコラボの真相 | Interviews ウブロ Takashi Murakami

当初、断ろう断ろうと思われていたHublotとのコラボレーションがついに6回目を迎えました。Hublotが村上隆さんの脳内を引き続きクリエイティブに起動させた要因はなんだったのでしょうか?

(ウブロ プレジデントアジアパシフィック リージョンの坂井)実和さんのパッションがあったからこそでした。彼女の情熱がずっと続き、それが今回のサファイア レインボーまで持っていってくれて、本当に感謝しています。オリジナルのケースで造形的な時計を作ることが試みだったので、ひとつのプロジェクトがゴールを切ったな、と思いました。

いま、ゴールとおっしゃいましたけど、もしかして今回がファイナルですか?

あ、いや、まだわかんないです(笑)。

複雑機構の機械式時計をやってみようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?

実は、20年ぐらい前に雑誌の企画でバーゼルウォッチフェアに行ったことがあるんです。豪華絢爛、百花繚乱の世界ですごかった。その時に、機械式時計を中心としたあのラグジュアリーのスタイルは、ひとつ次元が違うなと感じました。やっぱりクラフトマンシップのなかで徹底的に取り組んでいる世界はいいな、そんな憧憬を持ったんです。それで、そういうものがイチから作れるなら、こういうこともやってみたいという思いが生まれました。

で、そのあと浅岡肇さんという独立時計師と2度ほどコラボレーションしたんです。ただ、やっぱり手作りだと僕の思い描いている造形がすごく難易度が高く……、ただ浅岡さんも一生懸命やってくださったことでなんとかなった。ここで、“時計を手作りする”という経験したので、いったんはもういいかな、と思っていたんですよ。

村上隆と Hublot のコラボの真相 | Interviews ウブロ Takashi Murakami

そんななか、Hublotと組んでみようと思ったのは?

引き続き、たくさんの時計メーカーからオファーが来たんですけど、単純に断らず、「やるんだったらオリジナルケースでお願いします」って。そうしたら、いまコラボレーションしているHublotさんですら、最初はフワーッと消えて(笑)。だから熱量がないかもしれない、と思ってたんですが、僕の顧客であるThe Hour Glass(アワーグラス)のMichael Tay(マイケル・テイ)にHublotとのコラボレーションを懇願されて。もともとベルトだけ“お花”とか、ボックスだけが“お花”とか、そんなのだったら絶対にやらない、という話をしていました。そうしたら、Hublot側からあの初バーゼルの旅のときにすごく良くしてくれた実和さんが出てきて、ケースまでオリジナルでできるように、そこまで到達できるようにしますから! という話があって、決意しました。

完全に村上隆さん仕様のオリジナルケースになったのは4作目の「MP-15 タカシムラカミ トゥールビヨン オンリーウォッチ」でした。

そこに到達する前、3回目のコラボレーションの頃かな。オリジナルケースではなく、またHublotさんの既存のケース(クラシック・フュージョン)で展開しようとしていたので、「そういうんだったら大丈夫です」って、ステップバックしたんですよ。

実は、コラボレーションの話が決まった時、一番最初に描いた時計のスケッチ画を渡していたんです。それが、(サファイアクリスタルの)“お花”のものでした。実和さんが、あのスケッチ画をやるんでちょっと待ってください、と。そこから1年ほどかけて出てきたのが、(4作目と5作目につながる“お花”型の)サファイアクリスタルの完全オリジナルケースでした。すごい良きサプライズでした。

Hublotの時計技師は、非常に割れやすいサファイアクリスタルでお花を作るのは至難の技だったと言っていたそうです。花びらのような丸みを帯びた形に加工するとなると、幾日かけて作っても最後の過程で突然ボン!と割れてしまうようで。

オリジナルのケースはHublotさんにとってはものすごいハードルだったと思います。正直、自分にどれだけバリューがあるのかはわからないなか、試行錯誤して、サファイアクリスタルを使いしっかり“お花”のフォルムに仕上げてくれたのは感無量って感じですね。
村上隆と Hublot のコラボの真相 | Interviews ウブロ Takashi Murakami
ちなみにそのスケッチとは? そしてどこのどこまで村上さんがデザインされたのでしょう?

本当にササササーって描いた、ラフなスケッチです。

今回の6作目(MP-15 タカシムラカミ トゥールビヨン サファイア レインボー)は、どのようにして生まれたのでしょう?

5作目までが僕のクリエイティブ。今回の6作目は、僕のクリエイティブの部分にHublotさんが“カラーストーン”というプラスアルファのアイディアを入れてくださいました。

制作工程をすべてHublotに任せる。そこに不安はなかったのでしょうか?

ん〜、僕自身が別に時計を作ってるわけじゃないんで。僕は埼玉県に大きな工場を所有しているんですが、工場はやっぱりクリエイターの頭の中そのものだと思うんですね。スイスのHublotさんの工場に行ったとき、クリエイターという単体はいないものの、どっちの方向に向かおうとしているかっていうのはもう明確にわかるような工場でした。コンピュータリゼーションした機器もたくさん置いてあって。それが休みなく動きつつ、かといって人がいないとかじゃなくてたくさん人がいて。

工場内にいた時計技師である人々が、コンピュータを駆使しながらカービングしたり、入念にチェックしていたりする様子を見ていたら、この感じはクラフトマンシップとデジタルの究極の融合のように思えてすごく感銘を受けたんです。

なので、このHublotさんの工場の持つクリエイティビティは、身につけるアートということに対しても徹底的だと思ったので、自分のアイディアスケッチを持っていけば、彼らがそれをリアリティに落とし込んでくれるっていう安心感がありました。

今回限定20本。この本数とかは村上さんがお決めになったのでしょうか?

いや、その辺りはすべてHublotさんにお任せでした。今の今まで知りませんでした。


村上隆と Hublot のコラボの真相 | Interviews ウブロ Takashi Murakami

村上隆

1962年東京都生まれ。アーティスト、キュレーター、コレクター、映画監督、有限会社カイカイキキ創業者といったあらゆる顔を持つ。「スーパーフラット」セオリーの発案者にしてそのセオリー代表作家。

Read Full Article

次の記事を読む

Louis Vuitton x 村上隆 コラボコレクションが2025年に発売との噂
ファッション

Louis Vuitton x 村上隆 コラボコレクションが2025年に発売との噂

2025年1月のパリ・ファッションウィークにてお披露目?

村上隆とのコラボキャラクターが登場する NewJeans の新曲 “Right Now” の MV がついに公開
ミュージック 

村上隆とのコラボキャラクターが登場する NewJeans の新曲 “Right Now” の MV がついに公開

6月21日(金)にリリースする”Supernatural”に合わせて村上氏デザインによるコラボグッズも発売

村上隆と JP THE WAVY によるコラボユニットMNNK Bro. (Takashi Murakami & JP THE WAVY)が動き出した
ミュージック

村上隆と JP THE WAVY によるコラボユニットMNNK Bro. (Takashi Murakami & JP THE WAVY)が動き出した

本日2024年7月10日(水)、初となるシングルをリリースし、ミュージックビデオも公開! 巨匠の歌声も聴ける?


NewJeans の仕掛け人 ミン・ヒジンに訊く LINE FRIENDS と協業する理由
アート 

NewJeans の仕掛け人 ミン・ヒジンに訊く LINE FRIENDS と協業する理由

『LINE FRIENDS SQUARE SHIBUYA』のオープニングに駆けつけたところをキャッチ

押さえておきたい今週の必読記事5選
ファッション

押さえておきたい今週の必読記事5選

ジョシュ・トーマスのインタビューや Ye のニューアルバム『BULLY』の公式マーチャンダイズなど押さえておきたい今週の必読記事5選

Champion x DOVER STREET MARKET GINZA カプセルコレクション第2弾が到着
ファッション

Champion x DOVER STREET MARKET GINZA カプセルコレクション第2弾が到着

〈Champion〉の定番 T1011シリーズをベースにグリッタープリントやガーメントダイ加工を施したロングスリーブTシャツやフーディ、スウェットがラインアップ

Kith x New Balance が“マディソン・スクエア・ガーデン”に着想を得たコラボフットウェアを発表
フットウエア

Kith x New Balance が“マディソン・スクエア・ガーデン”に着想を得たコラボフットウェアを発表

「世界で最も有名なアリーナ」をイメージした“Made in U.K.” 991v2とNumeric 480が登場

WOOLRICH BLACK LABEL を仕掛けるトッド・スナイダーの頭の中 | Interviews
ファッション 

WOOLRICH BLACK LABEL を仕掛けるトッド・スナイダーの頭の中 | Interviews

ぼくに与えられた使命は、200年続いた歴史を次代につなぐことですね

8年ぶりに開催された Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN 2024 をレポート
ミュージック 

8年ぶりに開催された Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN 2024 をレポート

ナズやジョージ・クリントン率いるパーラメント・ファンカデリック、ナイル・ロジャース&シックなど豪華アーティストが集結した2日間を振り返る


URBAN RESEARCH KYOTO がコンセプトを刷新し全面リニューアルオープン
ファッション 

URBAN RESEARCH KYOTO がコンセプトを刷新し全面リニューアルオープン

Presented by URBAN RESEARCH
「new basic」をコンセプトに、『URBAN RESEARCH』のグローバルフラッグシップストアとして国内外のハブとなる新ショップが古都・京都に誕生

Back To Film : Sound’s Deli 主催の evrgreen が祝う中目黒 Solfa 16周年の夜
ミュージック 

Back To Film : Sound’s Deli 主催の evrgreen が祝う中目黒 Solfa 16周年の夜

彼らと親交の深いアーティストたちが勢揃い

Hypetrak 第4弾シングルとして新鋭ラッパー GOUU の新曲『Mandarin』がリリース
ミュージック 

Hypetrak 第4弾シングルとして新鋭ラッパー GOUU の新曲『Mandarin』がリリース

「THE HOPE2024」への出演を成し遂げた話題のラッパーにインタビューを行ったムービーも公開

Rick Owens が Moncler との最新コラボカプセルコレクションを発売
ファッション

Rick Owens が Moncler との最新コラボカプセルコレクションを発売

シャルロット・ペリアン設計による宿泊施設から着想を得た解体可能な山岳避難所とウェアコレクションを制作

Ralph Lauren よりクッションケース型のダイヤルを備えた新作ウォッチが登場
ウォッチ

Ralph Lauren よりクッションケース型のダイヤルを備えた新作ウォッチが登場

スターリングシルバーとローズゴールドの2種類がラインアップ

More ▾
 
ニュースレターに登録して、“最新情報”を見逃さないようにしよう。