Ferrari が新スーパーカー F80 を発表
0–100km/hはわずか2.15秒
およそ10年に1度、「フェラーリ(Ferrari)」はスーパーカー・シリーズのニューモデルを発表する。この習わしは、彼らが創業40周年を迎えた1987年にF40という歴史的名車をリリースしたときに始まったもので、以来、創業50周年はF50(1995年)、創業60周年はエンゾ・フェラーリ(2002年)、創業70周年はラ・フェラーリ(2013年)を生み出し、その歴史を紡いできた(カッコ内は発表年度)。これに、1984年発表の288GTOをくわえた5台が、これまでスーパーカー・シリーズとして発表されたモデルのすべて。正確に10年ごとではなく、ひどいときには5年も誤差があったりするあたりが「フェラーリ」の人間味溢れるところだったりするほか、288GTOの位置づけがちょっぴり微妙だったりするけれど、スーパーカー・シリーズに数え上げられるモデルが、「フェラーリ」にとってとびきり大切で特別な存在であることが、これでわかっていただけたと思う。
そして、創業80周年までは3年ほど早い今年、6番目のスーパーカー・シリーズとしてF80が発表された。
「スーパーカー・シリーズは、最高のパフォーマンスを備えていると同時に、フェラーリという会社の将来を象徴するモデルでもあります」。新設の「フェラーリ」eビルディングで開かれたF80の記者会見において、チーフ・マーケティング&コマーシャル・オフィサーのエンリコ・ガリエラ(Enrico Galliera)はそう語り始めた。「そして私たちの将来は、この建物とも密接な関係があります」。
2024年6月にオープンしたeビルディングは、従来からあるエンジン車やハイブリッド車にくわえ、2025年に発表されるフェラーリ初のEVも生産できる施設としてマラネロの本社工場内に建設された。そのeビルディングで記者会見を行ったということは、F80もなんらかの形で電動化されたモデルと見るのが自然である。
いや、F80のハイライトはむしろハイブリッドシステムにあるといっても間違いないくらい、その電動パワートレインは重要な役割を担っている。なんといっても、エンジンとハイブリッド・システムの合計で実に1200psを発揮するのだ。念のため申し上げると、F80は公道を走るのに必要なナンバープレートを備えたロードカーである。そう聞いて「一般道を走るのに1200psも必要なのか?」という疑問を抱いた人は少なくないだろう。
この疑問に対して、チーフ・プロダクト・デベロップメント・オフィサーのジャンマリア・フルジェンツィは次のように答えている。
「数字は、クルマを理解するのに役立つかもしれませんが、所詮はただの数字に過ぎません。それよりも私たちが大切にしたのがエモーションです。このクルマに乗ったドライバーやパッセンジャーの顔に笑みが浮かぶこと。私たちはこれを目標にしてF80を開発しました」。
つまり、1200ps自体が必要だったのではなく、1200psのパワーでなければ生み出せない感動や衝撃を乗る人に与えることが重要だったのである。ちなみに、この1200psのパワーのうち、実に900psは排気量3.0リッターのV6ツインターボエンジンによって発生。残る300psは、3基のモーターとリチウムイオン・バッテリーなどで構成されるハイブリッドシステムによって生み出される。このうち、V6エンジンは基本的に市販車の296GTB/296GTSで使われているものと同じだが、これと同じエンジンは499Pという純レーシングカーにも搭載され、去年と今年のルマン24時間レースで総合優勝を果たすという快挙を成し遂げた。それだけパワフルで信頼性が高いエンジンともいえるわけだが、V8やV12に比べて小型軽量であることも、V6エンジンがF80のパワートレインに選ばれた理由のひとつである。
F80はエクステリア・デザインも強烈だ。その外観はルマン24時間を戦う純レーシングカーにそっくりだし、ボディー後端に搭載された巨大なリアウィングもいかにもレーシングカーらしい雰囲気を醸し出している。ちなみにこのリアウィングは、必要に応じてウィング全体が20cmも迫り上がるうえ、ウィング自体の角度も可変するという本格的なもの。おまけに、F80全体で1050kgというレーシングカー並みのダウンフォースを発揮することも、公道を走れるロードカーとして異例なことだ。
さらにモノコックと呼ばれるボディー中心部の構造体やボディーパネルなどにカーボンコンポジット製(それもオートクレーブで焼き上げる本格的なドライカーボンを使用)を採用。サスペンションには、プロサングエに続いてアクティブ・サスペンションを用いるなど、未来志向の技術がしっかり詰まっている。
「格好もいいし、速そうだし、なにしろ公道を走れるナンバー付きというのが嬉しい。いったい、フェラーリはこのクルマをいくらで売ってくれるんだい?」
そんな疑問を抱いた読者のためにお伝えすると、イタリア国内の価格は付加価値税込みで360万ユーロ(約5億8000万円)。庶民にはまるで手が届かない値段だが、限定生産される799台はすべて買い手が決まっている模様である。そう聞くと、なおさらF80が魅力的に思えてくるのが人情というものだろう。
Ferrari F80
エンジン
内燃エンジン(ICE):タイプ V6–120°
総排気量:2992cc
最高出力:900cv / 8750 rpm
最大トルク:850 Nm / 5550 rpm
最高許容回転数:9000 rpm(動的リミッター9200 rpm)ハイブリッド・パワートレイン
タイプ:リッツ線集中巻きステーター、ステーターおよびローターはハルバッハ配列リア電気モーター(MGU-K)
作動電圧:650 – 860 V
最高出力:回生ブレーキ:70 kW(95 cv)、ICEアシスト:60 kW(81 cv)
最大トルク:45 Nm
最高回転数:30,000 rpm
重量:8.8 kgフロント・アクスル電気モーター
作動電圧:650 – 860 V
最高出力:各105 kW(142 cv)
最大トルク:121 Nm
最高回転数:30,000 rpm
重量:12.9 kgサイズ&重量
全長:4840 mm
全幅:2060 mm
全高(車両重量の状態):1138 mm
ホイールベース:2665 mm
フロント・トレッド:1701 mm
リア・トレッド:1660 mm
乾燥重量:1525 kg
乾燥パワーウェイト・レシオ 1.27 kg/cvトランスミッション&ギアボックス
8速デュアルクラッチF1 DCTパフォーマンス
最高速度:350 km/h
0–100km/h:2.15秒
0–200 km/h:5.75秒
100-0 km/h:28 m
200-0 km/h:98 m